長くつらい不妊治療の末に、特別養子縁組という方法を選んだ夫婦。
望まぬ妊娠によって、子供を手放すことになった幼い母親。
それぞれが抱える苦しみや葛藤を丁寧に描いた小説『朝が来る』
ドラマ化もされた名作が2020年に映画化されます!
原作のあらすじ・ネタバレ
辻村深月による小説『朝が来る』が原作です。
41歳の栗原佐都子は、夫の清和と息子の朝斗と暮らす専業主婦です。
今年で6歳になる朝斗は、優しい性格で家庭でも幼稚園でも不自由なく暮らしています。
子どもたち同士の些細な事故からママ間のいざこざも多少あるものの、佐都子は幸せを感じる生活を送っていました。
しかしある時、栗原家にある電話がかかってきます。
「息子を返してください」
実は朝斗は、長い不妊治療の末に子どもができないことが分かり夫婦が特別養子縁組によって迎え入れた子供でした。
そしてその電話は朝斗の生みの親である片倉ひかりからでした。
ひかりは養子縁組を仲介している「ベビーバトン」という団体から佐都子の連絡先を聞いて連絡したと言います。
栗原家で育った朝斗は、佐都子にとって間違いなく自分の子供であり、ひかりの要求に応じるつもりはありません。
実際に会って話をすることにした佐都子は、夫の清和とともにひかりを自宅に招いて対面します。
本来生みの親と育ての親が対面することはありませんが、朝斗が生まれたとき、ひかりの希望で佐都子と清和は会っていたのです。当時ひかりは14歳でした。
6年ぶりとは言え会ってみるとひかりの様子にはどこか違和感があります。ひかりは朝斗を返すのが無理ならばとお金を要求し、周りに知られたら大変だと脅迫めいたことまで言い出します。
しかし夫婦はすでに近しい人たちには事情を話しており、朝斗自身も「広島のお母ちゃん」として生みの親がいることを理解しています。
6年前に会ったひかりは朝斗への愛情を持っていたように見えたのに、今のひかりは全くそう見えず、清和は本当にひかりなのか?と聞きます。
そんなとき、朝斗がママ友に連れられて家に帰ってきて、ひかりはそのまま去ってしまいます。
それから1ヶ月後、警察が佐都子のもとへやってきて、ひかりと名乗った女性を探していると言うのでした。
幸せに暮らしている栗原家のもとに、朝斗の生みの親ひかりを名乗る女性が息子を返すかお金を払うかという要求をしてくるわけですね。
結局はひかりはそのまま去ってしまいますが、これはひかりがこれまで経験してきた悲惨な過去に関係しています。
ひかりは13歳のときに、家族に内緒で同級生の巧と交際を始めました。
母親は自分の思い通りにしようと縛り付けてくるため、ひかりは反発心を持っていました。
そんなある日、ひかりは貧血で近所の病院に診てもらった際に、自分が妊娠していることを知ります。そのときにはもうすでに中絶はできない時期まできていました。
母親は激昂し、ひかりの意思は聞かずに、子どもを必要としている家庭に引き取ってもらうことを決めます。
ひかりは一人で遠く離れた広島にある病院に行き、特別養子縁組を仲介する「ベビーバトン」代表の浅見に迎えられ、同じ境遇の妊婦たちと共に過ごします。
そして出産当日、無事に生まれた子どもを引き取りに栗原夫妻がやってきます。
少しでも長く子どもと一緒にいたかったひかりは夫婦との面会を希望します。
「朝が来たようだ」と喜ぶ夫婦は子どもに朝斗と名付け、出て行ってしまいました。
実家に戻ったあともひかりは家族と衝突を繰り返し、家出して広島へ向かいます。
そして浅見に会い、厚意でベビーバトンの寮においてもらえることになったひかりは広島で仕事を見つけ生活をします。
このときにひかりは浅見の資料を見て、朝斗の居場所を知ります。
しかし気づかぬ間に、失踪したルームメイトに借金の保証人にされていたひかりは借金取りに追われる生活になります。
お金など返すあてもなかったひかりは職場の金庫に手を付けてしまいますが、すぐにばれてしまいます。追い詰められたひかりは、朝斗が住むマンションへ向かいます。
家族への反発と望まぬ妊娠から転落していくひかりの人生。
栗原夫妻に会うものの、正体を疑われるほどに今の自分は母親には見えないのだということをひどく痛感し、栗原家を後にするのでした。
その後ネットカフェなどを転々としながら失意の中あてもなく生活をつづけたひかり。
犯罪者になり、お金も居場所もなくなった自分はもう生きていても仕方ないと感じ、歩道橋から飛び降りようとします。
その瞬間、誰かに抱きしめられ、振り返ると背後には佐都子がいました。
佐都子はひかりに起きたことを後から知り、あの日そのまま帰したことをずっと後悔していました。
光は泣きながらお詫びと感謝の言葉を伝えます。
傍には朝斗が立っていました。佐都子は「広島のお母ちゃんだよ」と朝斗に伝えます。
子どもが授からない夫婦の苦悩と、泣く泣く子どもを手放すことになった幼い母の苦悩、それぞれを丁寧に描きながら、希望が見えるラストを迎えます。
血の繋がりだけがすべてではない家族の絆や、その在り方を考えさせられます。
原作小説は泣けると評判です。
『朝が来る』(辻村深月著)読了。
あらすじを見て産みの親と育ての親の修羅場ものかと思っていたら全然違った←
血が繋がっていても生きていれば時には本気で衝突するのだから血縁というだけで家族の絆は大丈夫、と怠慢になってはならない。
人に寄り添うことの大切さを思い知らされる。#読書#読了 pic.twitter.com/yURuGWJ1XQ— 秋月まりこ (@sp_kaiji) November 15, 2018
「朝が来る/辻村深月」
恥ずかしながら特別養子縁組という制度をこの小説で知った。
不妊治療、夫婦の葛藤、親子の絆…辻村作品の多くがそうである様に、世代も性別も様々な登場人物の心の機微がとてもリアルに感じられて刺さる。
ラストシーンはこの小説で描きたかったであろう希望を感じた。
#読書— kuro (@kuro_koutouku) May 2, 2019
映画のキャスト
永作博美/栗原佐都子役
1970年10月14日生まれの俳優です。
代表作である映画『八日目の蝉』にて日本アカデミー賞最優秀助演女優賞のほか、多くの受賞歴があります。
『世にも奇妙な物語』シリーズへの出演も多く、歴代最多の8回を記録しています。
演技の幅の広さと、透明感あふれるルックスから、男女問わず人気です。
朝斗の育ての親の佐都子役を演じます。
井浦新/栗原清和役
1974年9月15日生まれの俳優、モデルです。
代表作に『ピンポン』、『空気人形』、『光』などがあります。
モデルとして活躍していて、過去にはパリコレに出演した経歴を持っています。
佐都子の夫の清和役を演じます。
蒔田彩珠/片倉ひかり役
2002年8月7日生まれの俳優です。
7歳で子役デビューし、是枝監督の作品に多く出演しています。
2018年に『志乃ちゃんは自分の名前が言えない」で映画初主演を務めました。
今後の活躍に期待が集まる若手俳優です。
朝斗の生みの親であるひかり役を演じます。
浅田美代子/浅見静恵役
1956年2月15日生まれの俳優、歌手、タレントです。
映画『釣りバカ日誌』シリーズで知られるほか、バラエティ番組にも出演し人気を集めます。
音楽活動もしており、デビュー曲の「赤い風船」は当時の年間セールス10位を記録、日本レコード大賞新人賞にも輝きました。
特別養子縁組を仲介する「ベビーバトン」の代表・浅見役を演じます。
本作の監督は河瀨直美。『萌の朱雀』、『殯の森』、『あん』などの多くの作品を手掛け、国内外問わず多くの映画賞を受賞しています。
まとめ
原作は辻村深月著の小説を原作にした感動映画です。
育ての親と生みの親それぞれの事情と苦悩を描いた、心に突き刺さるヒューマンドラマ映画で、苦しみを経験する中で自分だったらどう思うだろうか、と深く考えさせられる内容です。
2020年の初夏に公開予定です!期待して待ちましょう!
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