映画『万引き家族』は『誰も知らない』や『海街diary』で知られる是枝裕和監督の最新作です。
是枝裕和監督はこの作品に、この10年間考え続けてきたことを全部込めたと語っています。
万引きで生計を立てながら生活を送る家族を描いており、真のつながりや家族とは一体何なのかを問う、心を揺さぶる作品となっています。
そんな『万引き家族』について、紹介していきたいと思います。
Contents
『万引き家族』はどんな映画?
監督を務めるのは、「家族のかたち」に注目し描き続けている是枝裕和監督です。
音楽は是枝裕和監督とは初タッグの、細野晴臣さんが務めるそうです。
今作は、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されるそうです。
是枝裕和監督にとって、カンヌ国際映画祭へ出品するのは7回目であり、コンペディション部門へ出品するのは『海街diary』以来、5回目となるそうです。
是枝裕和監督自身は今回の出品についてこのように語っています。
「『賞レース』とか『意気込み』とはちょっと違う感慨もあって、本来の祭の目的である、映画という豊かな文化に触れて、今後の自分の映画作りの課題を見つけるようなゆったりとした時間にしたいなあと思っています」引用元
(続き)新聞、テレビで、作品を大きく取り上げて頂いておいて言うのもあれ、ですが、今回のカンヌ映画祭は、Netflixとの対立もあり、映画にとって映画館とは何か?そもそも映画とは何か?を考える良い機会だと自分でも思いますので是非その辺りも注目して、記事にしていってほしいです。要望でした。
— 是枝裕和 (@hkoreeda) April 13, 2018
賞を取りたいという気持ちよりも、自分にとっても観る人にとっても、なにか考えるきっかけとなってほしいという気持ちが強いように感じます。
『万引き家族』とともにカンヌ国際映画祭にも注目ですね。
<追記>
第71回カンヌ国際映画祭の授賞式が現地時間19日にフランスで行われ、
コンペティション部門に出品されていた是枝裕和監督作『万引き家族』が最高賞となるパルムドールを受賞する快挙を成し遂げた。
日本人が受賞するのは1997年の今村昌平監督作『うなぎ』以来21年ぶり。
引用元
やりましたね!!
これも売れそうです!
皆さんも映画も見て、本も見ないとね。
『万引き家族』のあらすじは?
高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。
冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。引用元
万引きで生計を立てる家族の話という衝撃的な内容です。
犯罪を通してしか繋がれない家族の絆と、その行方について描かれています。
予告編の前半部分では万引きをする姿や震えている女の子の様子、後半部分では畳の上で寝っ転がりながらビー玉で遊ぶ場面や手をつなぎ波打ち際で遊ぶ姿が映し出されており、それぞれのシーンの対比に胸が苦しくなりますね。
実話が元になったって本当?
監督・脚本・編集を担う是枝裕和監督は今作を作るにあたり、きっかけとなるニュースがあったそうです。
それは、親が亡くなった後もその親の年金を不正に受給していた一家のニュースだそうです。
是枝裕和監督はそのニュースを見て、こう感じたそうです。
「他人から見たら嘘でしかない『死んだと思いたくなかった』と言う家族の言い訳を聞いて、その言葉の背景を想像してみたくなりました」引用元
家族のかたちについて考え、描き続けてきた是枝裕和監督だからこそ、ニュースから映画化へと繋がったのかもしれませんね。
ストーリーと若干のネタバレ
街角のスーパーに子供連れの中年男がやってくる。
男の名前は治、子供の名前は祥太、二人は買い物をするふりをしながら見事な手際と連携で次々と商品を万引きしていく。
二人は帰り道団地のベランダで部屋から閉め出されている少女に出会い、流れで家に連れて帰っていく。
家には祖母の初枝、妻の信代、信代の妹の亜紀が暮らしていた。
じゅりを連れてきた二人を見てどうするつもりなのかとぼやきながらも三人はあれこれと世話を焼きだす。
じゅりを家に戻そうと団地に戻ってきた治と信代、しかし、窓ガラス越しに二人の耳に「じゅりを産みたくて産んだわけではない」という母親の声が、じゅりを残していくわけにはいかなかった。
治は日雇いの工事現場へ、信代はクリーニング工場に出勤、学校は家で勉強を教えてもらえない人間の行くところだと思っている祥太はじゅりを連れて近くの駄菓子屋へ万引きに。
一方、初枝は一家の定収入である月々の年金を下ろしに銀行へ向かい、亜紀は初枝に付き合った後、JK見学店に出勤、そこでは男性客相手にセーラー服に身を包みマジックミラー越しに下着姿を見せるときも。
ある日、テレビで少女誘拐のニュースが流れ、受理の顔が大写しになる。
もはや一家の一員となっていたじゅりは“りん”と名を変えて家族として暮らし始めた。
夏になり、ケガを治した治はその後も仕事に出ず、信代はリストラされた。
亜紀は常連の4番さんと密かに交流を持つようになった。
貧しさが迫ってきても家族はいつも明るく、家族で海にも出かけた。
ただ、祥太だけは自分の仕事に疑問を抱くようになっていた。
(以下の部分は大きなネタバレです。 映画をご覧になる前にお読みになると、映画そのもの見方が大きく変わってしまう可能性があります)
そして。
事態は大きく動き始める。
ある朝、初枝が死んでいた、老衰だった。
しかし一家は死亡届も出さずに家の地下に遺体を埋めて誰もいなかったことにする。
更に祥太をまねて万引きをしようとしたりんをかばうためにわざと捕まったことから一家は警察に身柄を抑えられる。
りん=じゅりとはもちろん、他の家族たちの間にも何の血縁関係もなかった。
治と信代は、元ホステスとその常連客、祥太は車上狙いをしたときに車にいた少年。
初代は孤独な老婆で、その孤独を埋めるために治たちを疑似家族を形成して住む場所を与えた。
亜紀は浮気して別の家庭を築いた初枝の夫の孫娘で、両親とうまくいっていないところを初枝に声をかけられて家族となった。
二人は疑似的な祖母と孫の関係を築いていた一方で、初枝は月命日ごとに亜紀の家に出向き小金をせびっていた。
真実が明らかになったことで一つの絆が消え去った。
是枝監督のリアルとファンタジー
今作の元ネタは死亡届を出さずに家族の年金を不正受給していたという事件が発端。
非常に生々しいところから出来上がったこの映画は、しかし不思議は夢物語のような空気を醸し出している。
一つボタンを掛け違えた瞬間全てが崩壊するというギリギリのところで成り立っている絆だからこそなのかそこ抜けな明るさが家族全体を包んでいる。
前作『三度目の殺人』もリアルな殺人という行為や虐待の影をしっかりと描きながら、その一方で雪景色をバックにした幸せそうな雪合戦シーンが挿入されメインキャラクターの一番奥底の心情を感じさせる。
JKビジネスで働く松岡茉優のリアルな肢体を見せる一方で、素性も知らない男性客4番との間には何も語らずに抱えている感情を共有するシーンを用意してくる。
元々、ドキュメンタリー畑から出た是枝監督はリアルをリアルとして捉えたうえでフィクションという名のファンタジーにくるむことができている。
『万引き家族』はそんな是枝映画の真骨頂を味わえる一本と言っていいだろう。
見た方の感想
<女性>
ストーリーの舞台に設定されている、主人公の柴田治たちが暮らしている一軒家の外観や
内部の描写が味わい深かったです。
周りの宅地が次から次へと取壊しにあっていく中でも、頑なにその場所に住み続けていく近所の住人が印象的です。
家族みんなで炬燵を囲みながらすき焼きをつつくシーンで、部屋の隅っこに膝を抱えて座り込んでしまうゆりの姿がいじらしいです。
お肉が少なめで麩がたっぷりとトッピングされた鍋も、不思議と美味しそうで心温まる物ものがあります。
まだまだ柴田一家に打ち解けていなかったゆりが、これ以降少しずつ心を開いていくことが伝わってきて感動的でした。
<男性>
注目していただきたいのは、この疑似家族の生活感でしょうか。
画面に映り込む生活必需品、冷蔵庫の汚さ、布団の汚さなど、少々ギョッとしてしまいました。
でも実際ありそう~!そこにお金をかけられるなら、万引きなんかやっていないよね…という説得力を感じました。
その描写力に、美術さんのこまやかな仕事を感じました。
父がいて、母がいて、子どもたちがいて、父は息子に、成長すれば女への興味が沸くものだと教える。
このあたりの”普遍的過ぎる”家族観やジェンダー観は、昨今の多様性を”発見”して受け入れつつある世間の風潮とは合わないのでは…?
とは感じつつ、日本人の大多数の認識なんてこんなもん、ましてや貧困にあえぐ人々の価値観なんてこんなもん。
ハリウッドの大作映画、金持ちのリベラルは世界が違うんだよ、と訴える印象も受けました。
是枝監督の集大成とも言って良い作品。是非、多くのひとの目に触れてほしいと思います。
『万引き家族』のキャストは?
リリー・フランキー(柴田 治役)
1963年生まれのマルチタレント。
俳優、イラストレーター、小説家、ミュージシャンなど様々な分野にて活躍されています。
また、絵本作品『おでんくん』の作者でもあり、子供から大人まで多くの人々に人気のある、多才な方です。
今作では、日雇い労働者であり、万引きでも稼ぐ父親を演じています。
安藤サクラ(柴田 信代役)
1986年生まれの女優さんです。
父は俳優やナレーターなどで活躍している奥田瑛二さん、母はエッセイストやタレントとして知られる安藤和津さん、姉は映画監督の安藤桃子さん、そして夫は俳優の柄本佑さんです。
2016年には『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞されています。
是枝裕和監督は安藤サクラさんの演技力について、このようなコメントを述べています。
「想像をはるかに超えて素晴らしかったので、どんな理由で彼女にオファーしたのか、もはや思い出せないんです。彼女でなければどうなっていたんだろうと思うくらい、本当に素晴らしかった」引用元
そんな実力派の安藤サクラさんの演技にも注目ですね。
今作では、柴田治の妻を演じています。
松岡茉優(柴田 亜紀役)
1995年生まれの女優さんです。
2008~2010年まで、おはガールとして『おはスタ』に出演されていました。
また、モーニング娘。の大ファンで、推しメンは鞘師里保さんだそうです。
今作では、JK見学店でアルバイトをする、柴田治と柴田信代の娘を演じています。
池松壮亮(4番さん役)
1990年生まれの俳優さんです。
『ラストサムライ』や『男たちの大和/YAMATO』、『デスノート Light up the NEW world』など、多くの有名作に出演されています。
また、前田敦子さん、柄本時生さん、高畑充希さんと「ブス会」というグループで時々集まっており、ファンの間でも話題となっています。
今作では、JK見学店の常連客を演じています。
あと大注目なのが子役のこの子です。
『万引き家族』の期待度は?
twitterでは『万引き家族』に関する反応が多く見られます。
発表されてからの、注目度抜群ですね。(^_^)
どんな作品なんだろう?(^_^)
早く見たい!見たい!♥️
ふふふ♥️#松岡茉優#万引き家族— なおき@まゆらー(仮) (@naoki_azr60) April 13, 2018
イーストウッドは映画は「配役が8割」と言ってるそうだけど、是枝監督の新作は最高の配役。リリーさんと安藤サクラの犯罪夫婦とかそれだけで観てみたい。#万引き家族
— キミテップⅢ世 (@chocolate_candy) April 12, 2018
邦画で気になるのは
万引き家族 かな…
監督好きだし
役者も鉄板で好きな人揃ってる— ドングリ@夏コミ3日目西ら09a (@donguri_BC) April 16, 2018
出演者が豪華であることからの反響が大きいようです。
実力派として名の知れるリリー・フランキーさん、安藤サクラさん、樹木希林さん、柄本明さん。
そして若い世代の方々にも人気の松岡茉優さん、池松壮亮さん、山田裕貴さんが出演されます。
キャスティングのバランスが抜群であることもその一端を担っているのかもしれませんね。
まとめ
今回は映画『万引き家族』について紹介しました。
是枝裕和監督が10年間考え続けた思いが込められている作品。
つながりとは一体何なのか、希薄な関係で溢れる今だからこそ観るべき映画と言えるかもしれません。
また細野晴臣さんが手がける音楽やカンヌ国際映画祭での賞の行方などにも注目です。
『万引き家族』は2018年6月8日から全国公開です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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